弾性要素はエネルギーを再生したり、衝突の衝撃を吸収したりすることができるため、多くのダイナミックロボットで使用されてきた。しかし、弾性要素の役割は補助的なものにとどまっている。ダイナミックな動作における弾性の潜在的な有用性は、ほとんど定量化されていない。そこで、本研究では、弾性要素が極めて大きいタスクである棒高跳びについて具体的に検討する。棒高跳びの研究では、エージェントによる能動的な操作が跳躍性能を向上させることが知られている。以前、我々は、シミュレーションにおいて、棒にぶら下がっている間の能動的ポール曲げ効果を調査した。このような能動的な操作は、身体の動きから生成される。本研究では、特に身体の運動から生じる慣性力の効果を検討する。ポールの差し込み点に近い位置(つまりタイミングが遅い位置)で振り上げ動作を行うことで、跳躍性能が向上するという仮説を立てた。大きな慣性力を発揮できるロボットを開発し、仮説検証のためのポール跳躍実験を行った。その結果、振り上げ動作が遅い方がエネルギーロスが少ないことがわかった。この結果は仮説を支持するものであり、振り上げ動作のタイミングが跳躍性能に寄与する重要な要素であることを示している。